いろいろな体験をして自分の可能性を広げてほしい成し遂げたいという強い気持ちがあれば、困難も乗り越えられる―

一般企業でOLをしながら、市民ランナーとして走り始めた谷川さん。東京国際女子マラソンなどの大会で優勝するなど、日本女子マラソン界で大活躍。40歳を超えた今も、現役ランナーにこだわり、「市民ランナーの星」として多くのファンに慕われている、谷川さんからお話をうかがいました。
運命に導かれてスタートした20代からの新たなマラソン人生
―マラソンを始めたのは社会人になってからなんですね?
「中学・高校と陸上部に入っていたんですが、本格的に始めたのは、OLとして働いていた24歳のときですね。社会に出て仕事にも慣れてきたころ、毎日が仕事場と家との往復で、『何かおもしろいことはないかな』『このまま人生終わっていいのかな』と漠然と感じていました。ちょうどそんなとき、同僚にお花見に誘われて皇居に行ったら、一般の方がたくさん走っていたのを見て、『走りたい』と運命的に感じたんです。勤めていた会社が大手町だったので、お昼休みの時間に毎日走っていました」
―学生時代と社会人になってからのマラソンは違いましたか?
「中学のときは練習が厳しくて実は途中で辞めてしまったんです。でも、途中で投げ出してしまった後悔が残っていて、高校時代は、『絶対3年間続けるぞ』と心に決め、毎日練習していました。ただ、当時は部活を続けることが目標で、どんな走りをしたいのか、マラソンに対する目標が全然なかった。でも社会人になってからは、本当に心から走りたいという思いに突き動かされていたと思う。静岡の市民レースで初めて優勝し、都民マラソン優勝、そして念願のシドニーマラソンにも出られました」
―その後、東京国際女子マラソン優勝など数多くの成功を収められたのは、なぜだと思いますか?
「一番多感な時期にいろいろな経験ができたのが逆によかったのかもしれません。私の経歴は特殊だったと思うんです。10~20代の大半をマラソン一筋に捧げるのが一般的だけれど、私は違った。社会人経験を経て、24歳からマラソン人生の本当のスタートを切った。だから逆にマラソンだけに集中できたのかもしれない。ライバルのみんなが練習につぎ込んだ時間を取り戻すじゃないけど、全力でマラソンに取り組まないと間に合わないという気持ちもあったし。中途半端な練習じゃなく、徹底的に自分を追い込んでがんばったからかな」
一番大事なのは自分自身のやる気だと思うその思いが困難を乗り越える原動力になる
―幼少時代はどのようなお子さんでしたか?
「アトピー性皮膚炎や小児ぜんそくを抱えていてひ弱でした。体は弱かったけど、走るのは速かったですね。病気がちな私を母親はあえて過保護にせず、困難に負けないようにたくましく育ててくれたと思います」
―やはり子どものころから走ることが好きだったんですね
「そうですね。毎日走っていると、体でわかることがあるんです。どうやったらより快適に速く走れるかが感覚でわかる。毎日やっているからこそ小さな違いに 気づき、体が自然と覚えるようになるんです。それがうれしくて仕方がなかった」
―素朴な質問なんですが、どうしたら速く走れるんですか?
「言葉で伝えるのはなかなか難しいですが、筋肉や体の使い方を脳に記憶させる。脳にその回路を植え付けるというのかな。つまり、脳を鍛えることなんです。例えば、股上げは昔からあるトレーニングですが、どの筋肉を使っているかを意識して動かすことが実は大事だったりする。私が主催している『ハイテクスポーツ塾』では、ビックリされるかもしれませんが、体験後の98%の人が速く走れるようになっているんです。『走り方がキレイになった』『初めてリレー選手に選ばれた』など嬉しい感想をたくさんいただいています」
―現在も現役を続けられていますが、42.195kmのフルマラソンは辛くないですか?
「もちろん(笑) けれどもその辛さより、『もっといい記録を出したい』『負けたくない』という気持ちのほうが強いですね」
―なるほど。でもどうしてそこまでがんばれるんですか?
「地雷排除のチャリティー活動にも参加していて、スーダンやパキスタンなどに訪れたことがあるんですが、貧困や死と隣り合わせで生きている人たちとふれあい、自分がいかに恵まれている環境にいるかを思い知らされました。それから大好きなマラソンをがんばれる環境にいること自体に感謝しなければならないと思うようになりました。衣食住が保障されているという当たり前のことは、全然当たり前じゃないと気づかされましたね」
―最後に子どもたちにメッセージをお願いします
「子どもたちにはいろいろなものを見て感じて、いろいろな体験をしてほしい。新しいことにチャレンジすることで、いろいろな発見がある。また、自分の意外な特技や隠れた才能を発見できることもあるし。あと、一番大事なのは、自分のやる気! 学校の先生や親からやりなさいと言われて行うのでは、辛くて苦しいだけ。何事でも追求していけば挫折や困難が必ずある。でも成し遂げたいという強い気持ちがあれば、かならず前に進めると思う。子どもたちには自分が好きなことを見つけてやり続けてほしい」
―本日はありがとうございました

今回のインタビューの聞き手となったのは、スクールツアーシップの指導責任者の松村さん。走ることが大好きという谷川さんは、毎年30本以上の市民レースに参加しているそうです。マラソンを続けることの楽しさや辛さなど、マラソンへの想いを熱く語ってくれました。