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登山家:野口 健

2009年1月20日

25歳で7大陸最高峰世界最年少登頂記録(当時)を打ち立てた野口健さん。現在は、登山家としてだけではなく、エベレストや富士山で清掃活動を行い、環境問題にも積極的に取り組まれている野口さんにお話をお聞きしました。

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すべてを懸けて頂点をめざす山登りを通じて、強い生命力が育まれたと思う


―25歳で7大陸最高峰世界最年少登頂記録を樹立されましたが、今振り返ってみてどのように感じられますか?

「大きな記録を打ち立てられたのは、父親をはじめ、いろいろな方にサポートしてもらったおかげだと思います。今思えば、高校生のときにモンブランやキリマンジャロの登頂に成功できたのは、本当に運がよかった。順調な登山家人生をスタートできたと思います。けれども、本当の意味で登山の奥深さを理解できたのは、大学時代になってからですね」


―何かきっかけがあったのですか?

「ええ、父親に言われた『冒険は資金を集めることから始まる。かっこばかりつけて冒険なんてするなよ』という言葉がとても心に突き刺さりましてね。山に登りたいという思いだけで突っ走っているのは、まだまだ子どもなのだと思い知らされました。自分の冒険のためにという、自己満足的な希望を周りに押し付けるのではなくて、他者を説得して企業にサポートしてもらい、自分の夢を実現していくことが大切だと気づきました。それからは、学生なりに一生懸命に企画書を書いて、企業に電話して営業活動をしました」


―子どもの頃から登山家になることが夢だったのですか?

「実は、登山家をめざす前は、カメラマンになりたかったんです。小学校のときに見たTVドラマに影響されて、中学校から高校まで写真部に所属していました。正義のためにスクープを追う、そんな熱い報道カメラマンにあこがれを抱いていた時期がありましたね。報道写真の世界に、生死をかけて山の頂点をめざす山登りと同じ空気を感じていたのかもしれません。ともに何かに命を懸ける必死さというか」


―目標に向かって、命を懸けて進む生き方なんてとても素敵ですね

「そんなかっこいいものじゃないですよ。ヒマラヤなど難関と言われる山々を登っていると、常に危険と隣り合わせなんです。人間は死を身近に感じると、やっぱり死にたくないと思うもの。だから、必死に生きようと本気になる。登山を通じて、生に対する執着心が芽生え、強い生命力が育まれたと思います」


海外生活で世界の現実を知った幼少時代子どもたちには実体験を重ねて成長してほしい


―アメリカで生まれ、外国で多くの時間を過ごされてきましたが、幼少時代について教えてください

「外務省に勤めていた父親の仕事の関係で、いろいろな国で過ごしました。赴任地であったサウジアラビアやエジプトなど、主に中東地域で暮らしていましたね。仕事のかたわら、父親がいろいろな所に旅行に連れて行ってくれたのがとても興味深かったです」


―特に印象に残っている場所などはありましたか?

「たくさんありますが、小学校のときに出かけたイスラエルのゴラン高原での光景は、今でも強烈に印象に残っています。砂漠のなかに何千もの大量の戦車が今でもそのまま放置され、地雷が埋まったままであることを示す印がいたる所に立っているんです。中東戦争の傷跡の深さを、幼心に痛感せずにはいられなかったですね。また、途上国のイエメンの首都サヌアでの病院の惨状も強く印象に残っています。この街には当時救急車が無くて、負傷者を治療しながら病院に運ぶことができなかった。市内に一つしかない緊急救命病院には、血を体から流している瀕死の人々が廊下に無造作に放置されていて。医師の数が全く足りないし、医療器具の整備具合もひどい。野戦病院という表現以外の言葉が見つからなかったですね」


―世界の現実を自分の目で見るという経験は、したくてもなかなかできないものですよね?

「ええ、いろいろな光景を目の当たりにして、正直ショックでしたが、子ども心に相当なインパクトがありました。今思えば、父親との旅を通じて、ある意味究極的な体験学習をしていたのかもしれません。リアリティーが醸し出す圧巻にふれると、理屈抜きに強烈に印象に残りますからね」


―父親である野口さんは、ご家庭ではどのようなお父様ですか?

「登山家ですので、なかなか家にいることができないのですが、一緒にいるときは可能な限り、娘を現場に連れて行ってあげるようにしています」


―野口さんが携わられている富士山清掃活動にも一緒に参加されているとお聞きしましたが

「ええ、0歳のときは娘を背中に背負って一緒に富士山に行きましたよ。2歳くらいになるとヨチヨチ歩けるようになるので、富士山で大人たちが清掃活動をする姿を見て、見よう見まねでごみを拾うようになって。今年で4歳になりましたが、以前公園でボール遊びをしていたら、いきなりボールが転がる方と違う方向に走り出すんです。後を追っかけていくと、落ちている空き缶を拾って、『ごみ捨てちゃいけないよね、パパ』と言ってきて。ああ、子どもにも伝わっているんだな、理解してくれているんだなぁと驚かされましたね。環境問題を伝えようと思って活動に連れて行っているわけではないけれど、大人が考えている以上に子どもは感覚的に物事を理解しているのだと感じましたね」


―最後に子どもたちにメッセージをお願いします

「知識ばかりを詰め込んで、頭でっかちになってほしくないですね。本を読んで習得する知識学習はもちろん大切だけれど、本当の意味で『理解する』というのは、実体験したうえでのことだと思う。実際に経験をしてみて、はじめて見える世界があるということを知ってほしいですね」


―本日はありがとうございました


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今回のインタビューの聞き手となったのは、スクールツアーシップの指導責任者の利倉さん。熱い語り口で、山への思いや携わられている活動への提言をしてくださいました。


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